
登山の相談を受ける中で、意外と多いのが「肩が痛い」「下山中に転倒した」「疲れやすい」という悩みです。
これらの多くは実は“ザックのフィッティングミス”が原因で起きています。
ザックはただの荷物入れではありません。身体に密着し、行動を支える命の装備です。
しかし、その重要性が見落とされ、間違った背負い方のまま山に入ってしまう人は少なくありません!
ザックが合っていないだけで、事故に近づく
実例1:後ろに引っ張られて転倒した男性の話
40代の男性登山者が、日帰り登山に普段使いのザックを持って入山。ヒップベルトも使わず、肩だけで背負っていたため、
重心が後ろにズレ、下山中にバランスを崩して転倒。背中を打ち、足をひねり、救助要請に至った。よくよく聞いてみると、男性は、買ったばかりのザックで、どのベルトがどの役目を果たしているかもはっきりわかっておらず、正しい性能使いこなせていなかったことが、事故につながった事例。
実例2:トレラン用ベストで肩が痛くなり、行動不能になった女性の話
30代女性が、レースで使っていたトレイルラン用ベストで登山に挑戦。
水や防寒着などを詰め込んだことでベストが重くなり、左右に揺れて肩がこすれ、背中も痛くなって途中で歩けなくなってしまいました。
使い慣れていたはずの装備でも、山行スタイルや荷物の量が違えば「適していない装備」になってしまうという典型的な例。
トレイルラン用のザックやULメーカーのザックで背負えるのは良いところ、10キロまで。それ以上の装備になってしまったり、自分の体型に合っていないものを背負うだけで事故につながってしまいます。
ザックのフィッティング基本5ポイント
- ヒップベルト:腰骨の上に乗せ、荷重の70%を支える
- ショルダーハーネス:肩とザックが密着し、浮きがないように
- チェストストラップ:ザックの左右の揺れを抑える。きつすぎ注意
- トップスタビライザー:ザック上部を引き寄せ、背中側に密着させる
- 背面長の調整:自分の背丈にザックが合っているかを確認する
荷物の詰め方がバランスを左右する
- 重いもの:背中側の上部にまとめる
- 中くらいの重さの物:中心部
- 軽くて頻繁に使う物:外ポケットや上部へ
中で荷物が動かないように、パッキングも工夫を。
左右非対称な重さ配分や、ザックの中で水が揺れるような詰め方は、身体のバランスを崩し、疲労や転倒の原因になります。
トレイル用ベストは万能ではない
トレラン用ベストは「走る」ために設計された装備です。軽量で揺れにくい一方、
荷物を詰めすぎると型崩れやベルトのずれが起こり、長時間の登山では痛みや行動不能を招く可能性があります。
トレイル用ベストを使う場合も、荷物量と時間に応じて、「どの装備が自分を支えてくれるか」を選びましょう。
ザックが合えば、登山が楽になる
ザックが正しくフィットしていれば、体の中心に荷重が集まり、疲れにくく、転倒しにくく、呼吸もしやすい状態になります。
肩や腰にだけ負担がかかると、下山時に脚が出にくくなったり、姿勢が崩れて転びやすくなったりします。
つまり、ザックの背負い方ひとつで「安全性」「行動力」「疲労度」が大きく変わるのです。
まとめ:ザックは“装備”ではなく“身体の一部”
登山中、ザックは常に自分の背中にあり、どんな時も一緒に動いています。
だからこそ、「身体に吸い付くようにフィットすること」が、もっとも重要なのです。
パッキング、フィッティング、荷物の選び方。それらはすべて「命を削らないための準備」。
山に入る前に鏡の前でザックを調整する──その5分の時間が、あなたの安全と快適さを支えてくれます。
筆者の例
トレイルラン(10L前後)
ノースフェイスのTRシリーズは万人向けだと思う。特にTR Rocketは軽くて背負いやすく秀逸。

ファストハイク(〜35L)
ファストハイク、ある程度の小さめなテント、やシュラフなども持つのならば、非常に便利なのがこのザック。

長期縦走など(40L〜75L)
40Lのザックで日帰りの雪山などで使っているのが、このグレゴリーのパラゴン。

背負いやすく、重さを感じにくいので非常にお勧め。
長い重曹や荷物が多くなったときに、余裕を持って背負うとなれば、自分はこのザック1択。グレゴリーのバルトロ。

昔は30,000円台で変えたが、今や50,000円台半ばになってしまった。バルトロは、ザック会のロールス・ロイス、背負い心地が間違いなく最高である。
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