ヤマで死なないサバイバルエッセンス / 1章:装備の基本と選び方

1-2. 軽量レインウェアの危険性

MA-SAN
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登山装備の中でも、「軽さ」で選ばれがちなレインウェア。
SNSやショップでは「プロが使ってる!」「レース対応!」といった言葉が並び、コンパクトでスタイリッシュな軽量モデルが人気を集めています。

けれど、あなたはそのレインウェアが本当に“山であなたを守ってくれる”と、信じて言えますか?

今回紹介するのは、軽量レインウェアに潜む“4つの落とし穴”と、「守る力」で選ぶための視点についてです。
あるトレイルランナーの実体験をもとに、「軽い装備」の裏側にあるリスクを見つめ直します。

「レインウェアを着ていたのに、体が冷えて震えが止まらなかった」

これは、ある30代の男性トレイルランナーが経験した出来事です。
その日、彼は午後から天気が崩れる予報を見て、午前中に登山を終える計画で行動していました。
装備は万全のつもりでした。レースでも使われる軽量レインウェア、スマートなザック、防水シューズ。
しかし下山中、雨が予想以上に早く降り出し、風も加わって気温が一気に下がっていきました。

「着ていたはずのレインウェアの内側がビショビショになっていたんです」
彼の言葉からは、戸惑いと恐怖がにじみ出ていました。
薄くて軽い、収納性抜群のレインウェア。しかし、その実態は「強い雨に耐えられる仕様ではなかった」のです。

[ザ・ノース・フェイス] ジャケット ストライクトレイルジャケット メンズ NP12374
耐水圧20,000mm、透湿性40,000g/m²-24h(B-1法)の防水透湿性を維持しながら、さらなる軽量化を実現した軽量防水シェルジャケットです。素材は、必要十分な強度と軽量性のバランスを考慮した、10デニールの3層構造ハイベントライトウェイトナイロンを使用。人間工学に基づいた動きやすいパターンで仕上げ、フードや...

忖度なしで、その時に男性が来ていたウェアはこちらです。晴れている日の予備として選ぶなら、間違いなく軽くそしてスリーレイヤー構造を満たしており、トレイルランレースでのレギュレーションも満たすものです。ただ、長い雨、極端な寒さには対応していないと思った方が良いです。

“軽い=優れている”は大きな誤解

登山用品の世界では「軽さ」が正義のように語られることが多々あります。
もちろん、装備を軽量化することには大きな意味があります。
しかし、防水・防寒という生命維持に直結する装備において「軽さだけで選ぶ」ことは、時に命を危険にさらします。

特にトレイルランナーやスピードハイカーに人気のある“超軽量レインウェア”の中には、「耐水圧が極端に低い」ものや、「レース義務装備をギリギリ満たすだけの作り」のものもあります。

モンベル mont-bell バーサライトジャケット メンズ レインウェアージャケット(男性用登山用雨具 雨カッパ) 1128592_M_ガンメタル(GM)
モンベル mont-bell バーサライトジャケット メンズ レインウェアージャケット(男性用登山用雨具 雨カッパ) 1128592_M_ガンメタル(GM)

モンベルのバーサライトジャケットは、晴れてる日のレギュレーションを満たすには安くて軽くて最高な品物だと思います!もちろん私も持っていますが、使い方を誤ると、これでは寒さも雨も防げないことがあります。

誤解を生む“プロが使っている”という言葉

実際にこの男性が使っていたレインウェアも、SNSやショップで「プロランナーが使っている」と紹介されていたものでした。
しかし、プロが使う環境と、一般登山者の環境は全く違います。

  • プロは着替えや保温着をサポートから受け取る
  • 行動時間が短く、装備の使い方に習熟している
  • ペースが速く、身体が冷えにくい

つまり、同じ装備でも「使う人」と「使う環境」が違えば、性能の意味も大きく変わるのです。

軽量レインウェアが抱える4つのリスク

1. 耐水圧の不足

雨が強まったり、ザックで生地が圧迫されたりすると、水が内部に染み込みます。
「撥水性」はあっても、「防水性」はないモデルも存在します。

2. 透湿性の不足

通気性が悪いと、汗が内部にこもって蒸れ、結果的に「内側から濡れる」状態に。
これにより急激に体温が奪われ、低体温症のリスクが増します。

3. 保温力の欠如

軽さを追求するがゆえに、生地が極端に薄いモデルも多くあります。
風が強い稜線では防風力が弱く、気化熱によって体感温度が一気に下がります。

4. 緊急時に頼れない

激しい雨、強風、気温低下が同時に起こるような状況では、“装備に守られている”という感覚が生死を分けます。
「これで本当に大丈夫か?」と疑問を持った時点で、それは登山装備ではありません。

実際のところ、多くのウェアは、耐水性透湿性で優れた数値を持っていると謳っています。

本当にそれは正しいのでしょうか??

自分が手にしてみて羽織ってみて、これが本当に困ったときに命を守ってくれると感じるウェアが自分では良いウェアだと感じます。

200グラムを切るようなウェアでは、そのようなものはないと思った方が良いでしょう。

“守られる装備”を選ぶということ

レインウェアを選ぶときには、軽さだけでなく、「耐水圧」「透湿性」「耐久性」のバランスを見ましょう。
登山用として安心できる基準は、

  • 耐水圧:10,000mm 以上
  • 透湿性:20,000g/m²/24h 以上

もちろん、すべての条件を満たす製品は高価になります。
でもそれは、「命の保険料」として考えるべきものです。

登山で雨や風を経験してきた人ならわかるはずです。必ずレインウェアは手に取り羽織ってみて、本当に困ったときに自分は守ってくれるのか相談してしまい、最後に1番上に着るウェアはこのウェアだ、と言うことをイメージしたときに、それに耐え得るものであるか?

それを選ぶ基準にしても良いかと思います。

まとめ:軽さではなく、“帰れるかどうか”で選ぼう

軽量レインウェアは、パッキングも楽で、携帯性も抜群。
ただしそれは、「軽さと引き換えに、どんなリスクを背負うか」を理解した上で選ぶ必要があるということ。

見た目、スペック、価格だけで判断せず、自分の行動時間・山域・気象条件に合った装備を選びましょう。
レインウェアは「濡れないため」の道具ではありません。「帰るため」の命の装備です。

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