
登山の寒さ対策といえば、まず思いつくのが「使い捨てカイロ」。
軽くて安くて、ポケットに入れておけば安心——そう思っていませんか?
しかし、そのカイロが「命を守る道具」になるかどうかは別の話です。
本当に冷えた身体を温めるには、カイロでは“足りない”どころか、使い方を間違えれば逆に危険になることも。
この記事では、カイロの意外な落とし穴と、山で本当に有効な寒さ対策について、登山現場の目線から解説します。
使い捨てカイロの落とし穴 ― それ、本当に命を守れる?
「寒くなったらカイロがあるから大丈夫」
そう信じて登山に出かける人は少なくありません。手軽で軽く、ポケットに忍ばせておけばなんとなく安心できる使い捨てカイロ。
しかし――いざ命の危機にさらされるような状況で、本当にそれが暖を取る手段として有効かというと、答えは「No」です。
カイロはあくまで補助的な防寒具。むしろ、間違った使い方や過信によってリスクを高めてしまうことすらあります。

もちろん持っていくなということではありませんし、持っていくならこの「マグマ」がオススメです!
実際に起きた救助事例:カイロが“冷え”を加速したケース
中高年の登山グループ5人が秋山登山中、1名が低体温症のような症状を訴え、救急要請。
救助隊が駆けつけた際、その登山者の背中とお腹には使い捨てカイロが貼られていたものの、身体は明らかに冷えきっており、唇も紫色。
原因は「汗冷え」でした。
登山中の発汗により下着が濡れ、その上からカイロを貼っていたために熱がこもってさらに発汗を促進。結果的に濡れた衣類が冷却材のようになって体温を奪っていたのです。
救助隊はカイロをすぐに取り外し、濡れた服を脱がせ、予備の着替えと防寒着に着替えさせることで回復。カイロに頼っていた本人や仲間も「貼っているから安心だと思っていた」と話していました。
教訓: カイロを貼っていても、それだけでは低体温は防げません。濡れた衣類は必ず取り替える。温めるのではなく、「冷やさない」ことこそが命を守る鍵!
低体温症には「効かない」カイロ
冷えきった身体にカイロを貼っても、「あたたかい気がする」だけで、体の中心から体温を上げることはできません。
寒さを訴える人にカイロを渡して、温まってもらっても、皮膚表面の温度だけが上がることで安心してしまい、結果として低体温が進行してしまうこともあります。
さらに、カイロは濡れると発熱しなくなります。雨や汗、結露などで一度でも濡れると“終了”です。
「貼るカイロ」はリスクもある
背中や腰に貼るカイロ。たしかに温かいですが、登山中は運動量が多く汗をかきやすいため、カイロがある場所だけ汗冷えを起こしてしまうこともあります。
どうしても使う場合は、貼らないタイプのカイロを、状況に応じて使うのが安全です。

↑貼らないカイロがおすすめ、冷気に触れにくい内ポケットなどに入れよう。↑
本当に暖を取りたいときは「お湯」
本当に身体を温めたいときに一番効果的なのが、ビニール水筒(プラティパスなど)に沸騰させたお湯を入れて湯たんぽとして使う方法です。

- お湯は低体温症にも効果的に熱を伝える
- 防寒対策として使ったあと、そのまま飲料水として使える
- 荷物としてムダがない
これは命を守る暖房器具と水分補給を両立できる装備として、救助隊の間でも推奨されている方法です。
登山で「万が一」を想定するなら、プラティパスとバーナー(例:ジェットボイル)はセットで持つべきと言えるでしょう。

ジェットボイル、買うなら沸くのも早いし、点火装置付きの「フラッシュ」がオススメです。
カイロの「賢い使い方」
- 常備しておくのは悪くない: あくまで補助的な保温アイテムとして考える
- 貼るタイプより、貼らないタイプ: 状況に応じて移動できる。汗冷えのリスクが低い
- 使い終わったカイロは靴に入れると消臭効果あり!
まとめ:カイロは「安心材料」、命を守るのは自分の熱
使い捨てカイロは、確かに軽くて便利です。持っていて損はありません。でも、命を守るために本当に頼るべきなのは自分自身の体温と、その熱を逃がさない装備です。
ビニール水筒+お湯=命を守る熱源
これを覚えておくだけで、あなたの登山はひとつ安全に近づきます。
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